新世界の歩き方

Cruising at SHINSEKAI

【新世界の歩き方】はゲイの皆さんのために贈る、ハッテン通信です。

【新世界】と言っていても東京・名古屋、もしかしたらあなたの住んでいる街のことかもしれません。
信じるか信じないかはあなた次第です…。

  • 新世界とタコ入道

    タイトルだけ見たら「何のこっちゃ?」と思う人も多いだろう。
    一応、宇宙からきた大タコが新世界に現れた話ではない、ということだけはお断りしておくが、管理人にとってはそれと同じくらい衝撃を受けたのがこの街。「新世界」だった。

    それはそれは遠く二十数年前の出来事。私はまだまだオトコの世界など全く知らない懐かしくも若かりし頃。
    まだノンケさんモードの生活をしており、一応結婚などというものもしなくちゃいけないもんかなと思っていた頃…だったのだけれども、
    とある場末の本屋で見かけたS誌やH満などのグラビアに心を奪われて自分がコチラの世界の人間ということを理解しつつも、まだまだ心とカラダにブレーキをかけておりました。

    純情だった頃もあったんです。これでも。

    でもね、当時は20代そこそこ。
    まあこう言っちゃなんだけど、ヤリたい盛りじゃないですか。
    心と身体の願望は乖離するばかりだったそんな時期、私の中では大阪の新世界という場所がどうやらその願望を満たしてくれる場所らしいと気づいた。

    新世界とタコ入道 私がなぜ【新世界】って名前を知ったのか?それはS誌やH満巻末にある「○○マッサージ」やら「○○治療院」などという広告に書かれていた住所。

    それが「新世界」だった。

    カンのいい(?)私はこれらのお店はきっと、こーいったお店なんだろうなぁ、あんなとこ、こんなとこもマッサージしてくれるお店なんだろうねぇ?って。
    そりゃ分かってたわよ。おめぇさん。

    でもね、

    行ったら怖いおにーさんが出てきたらどうしよ?とか
    スッポンポンにされて行きかう人たちの群れに放り投げられたりとか、
    身ぐるみはがされたらどうしましょ?って思うじゃない。

    初体験つーものは何であろうと怖いものは、怖いし、避けれるもんなら避けたいと思うのが人の常。

    そんなことを思っていたら事もあろうか、仕事で大阪に行くってことになり「新世界」に足を踏み入れるチャンスが廻ってきた!

    こうなると、そんな恐怖よりも願望を満たしてくれるのではないのかと期待するのもまた人の常。

    大阪出張当日、仕事よりも夜にこんなこと、あんなことがあるであろう、期待と願望でアタマと股間を膨らませっぱなしでいた私がいた。
    仕事は適当に済ませ、いざ新世界に向かったのはいいのだがまだGOOGLE MAPもスマホも何にもない時代。
    慣れない新世界界隈をS誌の切れ端をもって歩き回った小雨の中。

    ようやくたどり着いたのは今も某コンビニがある大きなマンションのとある階。勇気をもってチャイムを鳴らす。
    「ピンポーン」
    数秒たっただろうか。「ほーい」と野太くていかにも
    おっさんという感じの声が響く。
    そこに現れたのは

    でっでっ出たー!!

    白い越中ふんどしなびかせ、上半身裸の大将よろしく、頭がつるっぱげのタコ入道だった!!

    新世界とタコ入道 あまりも強烈なビジュアルに圧倒されながら私はしばし、茫然と玄関で立ち尽くすだけだった。
    タコ入道は「まぁまぁ、そんな所につっ立ってなくてもいいから入りーや」と踵を返しながら部屋にいざなう。
    私は関西弁丸出しの声にハッと我に返り、これから初めて体験する「オトコ」という異次元の世界へ行くために境界線のドアを閉めた。

    その後、そこで何が行われたのかはよく覚えていない。

    懸案だった怖いおじさん、お兄さんも出てこなかったし、とりあえず身ぐるみもはがされなかった、とタコ入道の名誉(?)のために言っておこう。

    とにかく新世界でオトコにしてもらったあのタコ入道さんに感謝の意を表したい…だけども、 ひとつだけ、どーしてもひとつ忘れられないことがあった。

    そのタコ入道が私の帰り際にこう言った。

    「ごめんなー 今日なぁ、おっちゃん入れ歯の調子が悪くてな~兄ちゃんの咥えてあげられんかったわぁ~」
    そんなことを彼はのたまったので私は英語が喋れず冷や汗かいているおっちゃんのように
    「そうなんですか~いいですよ。全然、大丈夫です~」と目いっぱいのジャパニーズスマイルを浮かべていた。

    でも、今思えばね、
    今思えば、

    「おめー若造が来たからって、手抜きすんなよ!このジジイ!」
    「入れ歯の調子が悪かったら外して咥えろや!!ボケェ!!」

    あら、いやだ。私としたことがはしたなかったわ。

    そんなこんなで新世界はあなどれない。
    この街を訪れる度、あのタコ入道は今頃どうしているのだろう?などと思いながらも
    今日も新世界の夜は暮れていくのであった。


    ※このエッセイは「福馬マスター」及び「福馬スタッフ」とは無関係です。お尋ねになるのはご遠慮ください。
    更新日:2018年03月18日